脳卒中者が感じている世界観!〜脳卒中つくばリハビリセンター〜
日頃、脳卒中のクライアントさんと一緒にリハビリをしますが、
私自身、クライアントさんの様子を観察しながら、
いつも悩みます。
本当にたくさん悩みます。
なぜなら、
私が脳卒中の経験がないからです。
脳の病気になるとはどのような感じなのか!
脳卒中のクライアントさんは
- どんなことを感じているのだろうか?
- 何が見えているのだろうか?
いつもこの考えを抱きながら、
答えを探しています。
そのため、
少しでも、クライアントさんの世界観に近づくために、
『どのように見えますか?』
『どんな感触ですか?』
この質問をたくさん問いかけては
リアルな声をいただきます。
今回は、
クライアントさんの貴重な声を集めてみました。
セラピストが少しでも同じ世界観や価値観に近づけるように、
ご紹介します!
<自身の体について>
- そもそも2〜3ヶ月リハビリすればよくなると思った
- 自分の体では無い感じ
- よくなったり悪かったり、ムラがあるんです
- 急に体半分が無くなった
- 何でもできる気がするけど、できないんだよなあ
- 本当に辛い
- 前より自分の足の感じがします
- だんだん体がわかってきました
<心理状態>
- 怖い
- 周りに人がいるだけで、なんとなく疲れる
- 考えると頭が真っ白になるんですよ
- これ以上(体の中心線より)横に動くと、倒れそうです
- (不随意運動に対して)悪さしないでくれって願うことがある
- 助けてもらうことが申し訳なくて
- 回復が進まないと落ち込む
- (リハビリに対して)こんなこともうヤダよ
- よく体が動いていた姿の夢を見ます
- 家族の話をするだけで泣けてくるの
- 手を握ってくれるだけで安心
- そばにいてくれるだけで、安心
<視空間認知について>
- 景色がゆがんで見える
- 景色が波をうっているように見えます
- 床が傾いてます
- 壁が急に狭くなっている
- 壁が動いて見えるんですよ
- 目の前に霧がかかっている
- 縦は普通だけど、横は二重に見える
- もう光が眩しい。目を閉じてていいですか?
- 顔を斜めにすると(横目で見ると)はっきり見えます
<接触・圧などの感覚刺激に対する感じ方>
- えっ、触ってますか?
- 全然分からない
- 痺れが増します
- 痺れが増すので、触られたのがわかります
- 立ったときは、正座で足が痺れた時の状態がずっと続いています
- (なでる程度の刺激に)思いっきり叩かれた感じがする
- (触れるだけで)いや〜、痛い!
- 針で刺された感じ
- (足指を触っている時)膝か太ももの前かな?
- なんだろう、痛痒くなるんだよな
- 常に厚めの靴下を2枚履いている感じです
- 一年中、常に寒いんですよね
- 前よりわかってきました
<身体認知について>
- 自分の脚じゃないみたい
- 体、曲がってます?
- ここが真っ直ぐですか?すごく捻られてます
- 重い、とにかく重りを繋がれた感じ
- 頭のてっぺんまで下に引っ張られてます
- あれ、手が無くなった
- (顔の麻痺に対して)何か硬いものが中に入ってる
- (失調症状があり)いつも地震が起きてるんだよね
- (Pusher現象に対して)こっちから(麻痺側)から引っ張られるんだよな
- (骨盤の水平位や歩きの踏み返しができると)脚が伸びた
- (両肩甲骨を水平にすると)麻痺側がものすごく持ち上げられてます
- (姿勢が真っ直ぐ伸びると)体が軽くなって飛んでいきそう
- (肩甲骨の動きを獲得した時)腕がビュンと伸びた。止まらない
- (麻痺側からの声かけに)頭の後ろから声をずっとかけられている気分
- 今は真っ直ぐに感じます
- 足の裏が真っ直ぐ着くのを感じます
<歩行について>
- 歩かされている、自分で歩いてる感じは2割くらい
- 脚が鉄の棒みたいに突っ張る
- (重心移動にて)麻痺してない足の体重が減ったので、麻痺の足に体重が乗ったと思ってます
- (一般的な二動作のリズムで歩くと)スピードが速すぎて怖い
- (ガニ股傾向が真っ直ぐになると)内股になってます
- 装具は固いし重くて足が出しづらい
- 装具の中で、足が常に浮いている(しっかり着いている状態だが・・・)
- (階段の上り)麻痺の脚から登ったほうがやりやすい
- (下り坂で後方姿勢に対して)体が前に傾いているから、真っ直ぐしてます
- あ、おヘソを一緒に移動すると歩くのが楽!
<手作業の感触>
- 今、物を持ったのかな?どうなんだろ?
- 厚手の手袋をつけている感じだな
- 手が戦うんだよね
- 勝手に指が曲がってきて、邪魔するんだよ
- (腕を)止めようとすればするほど勝手に動くし
- (物を握ろうとすると)弾かれる
- 大は小を兼ねるから、力いっぱい出します
- 手をちょん切りたい
- (思うように動かせず)もう、って思います
- 腕を取り替えたいです
- だんだん動きを感じてきました
クライアントさんの実際の声を聞くと
外から観察していることと
クライアントさんが感じていることを比較すると
”えっ”っと思うことがたくさんありますね。
特に、
Pusher現象の麻痺側から引っ張られる感じがするは、
本当に貴重です。
セラピストは
クライアントさんが違う世界を感じていることを
理解することが大切です。
リハビリに関わるセラピストが
クライアントさんと信頼関係を築くための第一歩は、
クライアントさんの世界観を知ることかもしれません。