脳卒中後遺症として肩の痛みをコントロールしたい!脳卒中つくばリハビリセンター!
脳卒中後遺症として手や腕に麻痺がある場合、しばしば肩の痛みに悩まされる方がいます。
手を使った作業だけではなく、寝返り、起き上がりなどの基本動作時や夜寝ている時も痛くなることがあります。
痛みで夜眠れないと本当に辛いですよね。
痛みを和らげ、少しでも楽になりたいところ。
さて、今回は、脳卒中後遺症として肩の痛みに悩んでいる方に、肩の痛みをコントロールする方法をお伝えします。
肩の構造
肩の骨は、受け皿となる肩甲骨と腕を動かす上腕骨で肩甲上腕関節を構成し、鎖骨と胸骨が動きを補助します。
一般的に肩というと肩甲上腕関節を指します。
肩甲上腕関節は繊維性の関節包で包まれ、関節液で満たされ陰圧に保たれています。
肩がしなやかに使えるように、沢山の筋肉がバランスよく関節を覆っています。
また、肩の周りには、痛みも感知する受容器や神経、血管など様々な組織が密に通っています。
肩の痛みの原因
では、肩の痛みがどのように起こるのか
原因をお伝えします。
麻痺による筋肉や関節包の伸張痛
麻痺が重度の場合、肩周りの筋肉や関節包が弛緩し、肩甲上腕関節が安定した位置で機能しにくい状態になります。
猫背により肩甲骨の位置がズレると更に肩の機能低下を助長します。
腕の重みで筋肉や関節包が下に引き伸ばされてしまうため、
痛みが生じます。
しばしば肩の亜脱臼が観察されます。
筋肉や関節包の過緊張や短縮による痛み
肩周りの筋肉の一部や関節包の緊張が強くなることで組織の血流が低下します。
血流が低下すると酸素栄養が低下するため、これらの組織は悲鳴をあげ痛み物質を発生させます。
この痛み物質を受容器が感知すると痛みが生じます。
関節内の骨の衝突や組織のすり減りによる痛み
前述の緊張状態や短縮が長期間続くと関節が固くなり拘縮します。
関節内圧はさらに陰圧となりますます組織を圧縮します。
そのため、肩を動かそうとすると骨同士が衝突したり、
筋肉や靭帯、関節包などの組織がすり減るため、痛みが生じます。
脳の感覚野の障害
痛みなどの感覚情報は脳の感覚野と呼ばれるところに伝達されます。
脳卒中により感覚野に障害が生じると痛みの情報が正確に処理されないため、
強い痛みや逆に何も感じないなどの感覚障害が生じます。
肩手症候群
脳卒中を発症して2、3か月以降にしばしば起こり、手や肩の腫れや浮腫み、
灼熱感や痛みを生じます。
詳しいメカニズムははっきり解明されていませんが、血流を調整する交感神経(自律神経の一つ)の反射の調整障害と言われています。
治療に難渋することも多く、治療に1〜2年かかることもあります。
肩の痛みをコントロールする方法について
さて、肩の痛みの原因が理解できたら
生活の場でどのように対処したら良いのか、
痛みをコントロールする方法をお伝えします。
良い姿勢を保つ
まず猫背を防ぎ、背筋を伸ばすことです。
良い姿勢をとることで肩甲骨や肩が機能しやすい位置を保ち、
筋肉や関節包に偏ったストレスがかかることを防ぎます。
肩の亜脱臼を防ぐ
座っている時は肘をテーブルの上におき、肩が下がらないように防ぎます。
三角巾や肩専用のサポーターを使用し、肩を保護することをお勧めします。
ただし、
三角巾は長期間使用すると腕が曲がったまま固定されるため、
拘縮に注意が必要です。
姿勢や関節位置に対しては対処しやすいですが、
では、
脳の障害や交感神経の調整障害に対してはどうしたらよいのでしょうか?
脳の障害に対するコントロール
脳の感覚野の障害を直接回復させることは難しいですが、
温冷覚、触覚など違う刺激を加えることで痛みを和らげることが可能です。
例えば、背中やお腹に手のひらを当てると温もりが心地よいですよね。
または、足の指をぶつけた時、摩ると痛みが和らぎますよね。
痛みと違う刺激を加えることで痛みの感じ方を抑えたりすり替えたりすることが可能なのです。
ホットパックやアイシング、マッサージなどが有効です。
また、障害と反対側の手足に同じ感覚刺激を加えて左右を比較し、
感覚の違いを体で学習することも有効です。
交感神経の調整障害のコントロール
手や肩の温熱と冷却を交互に繰り返すことが有効です。
血液に張り巡っている自律神経が温冷の情報をキャッチし、血流の調整力を高めることで熱感や痛みを軽減することができるのです。
まとめ
脳卒中後遺症の肩の痛みに対して
原因を理解し、
上手に痛みをコントロールしていくことで
痛みに悩まされない明るい生活を送っていきましょう。