脳卒中後、手足が麻痺になると、

誰もが手足が動くようになりたいと思って

一生懸命にリハビリをしますが、

思い描くように動かせないことがあります。

 

何が原因なのでしょうか?

 

一つの原因として、運動を命令する脳の運動野という領域が

障害を負っていることや、

運動の命令を伝える運動神経が障害を負っていることがあります。

 

しかし、

これら二つの障害が軽いにも関わらず

手足がよく動かせない場合があります。

 

何故なのでしょうか?

 

このヒントとして、脳卒中の方からよくこんな声を聞きます。

 

「足が地面についているかよくわからない」

「手に厚みがあるような感じがして、握ってもよくわからない」

などです。

この声に共通することは、

手足の感覚が障害を負っているのです。

 

つまり、運動するためには正確な感覚情報が大切なのです。

 

今回は、感覚の仕組みと大切さをお伝えし、

感覚と運動の繋がりを紹介します。

 

感覚の種類

 

一言に感覚と言っても我々の体には様々な感覚器官が備わっていますが、

皆さんはどのような感覚器官が思いつくでしょうか?

 

身近なもので、触覚や視覚、聴覚が思い浮かぶでしょう。

 

感覚の種類は、

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、平衡感覚の特殊感覚

触覚、圧覚、温覚、冷覚、痛覚、運動感覚の体性感覚

臓器感覚、内臓痛覚の内臓感覚に分けられます。

 

聞きなれない名前もありますが、

体性感覚は皮膚感覚と運動感覚に分けられ、

皮膚感覚は、皮膚表面にある様々な受容器によって感知しているため、

表在感覚とも言われています。

運動感覚は、姿勢を保つ時や運動している時に身体深部の筋や腱に備わっている受容器によって

筋・腱の緊張の変化を感じ取っているため、

深部感覚とも言われています。

 

また、

平衡感覚は、内耳の器官により体の傾きや回転、加速などを感じ取っています。

前庭系とも言われています。

 

これらの様々な感覚器官によって周りの情報を取り込み、

脳内で情報を処理することで、様々な情報を感じて認識しているのです。

 

運動に必要な3つの感覚情報

 

沢山の感覚器官がありますが、

手足の運動には全部の感覚器官が利用されているわけではありません。

姿勢を保つときや運動時に特に利用されている3つの感覚情報を紹介します。

 

まず、一つ目は視覚です。

景色の情報をしっかり見つめたり、見える情報をぼんやり取り込むことで、

正確な運動に繋げています。

外界の情報の取り込みの大部分が視覚に頼っています。

 

二つ目は、前庭系です。

前庭系は体の揺れや傾き、回転や加速の情報を内耳で取り込み、情報が脳幹の橋へ送られます。起き上がりや立ち上がり、歩行移動など様々な姿勢の変化の情報を捉えています。

大脳皮質の脳卒中の場合、前庭器官の直接的な損傷は無いため、

リハビリにてバランスの再学習には重要なポイントとなります。

 

三つ目は、体性感覚です。

日常生活での手足の運動や道具の操作で特に利用されている感覚情報です。

表在感覚と深部感覚の受容器は全身のあらゆる部位にあるため、

より繊細に情報を取り込むことが可能です。

そのため、運動時により選択的に効率よく感覚情報を利用することが出来るのです。

この体性感覚には、

大脳で意識的に感じる感覚と、

小脳で無意識的に感じ取っている感覚があります。

大脳の脳梗塞であっても小脳の利用して、

感覚情報を取り込んでいるのです。

 

運動と感覚のつながり

私たちが動くために、どれだけ感覚が関係しているか

ここではバスケットボールのシュートを例に

運動と感覚のつながりを理解してみましょう。

 

初めてバスケットボールのシュート練習をすると、

上手くシュートが入らないことが多いですよね。

なぜでしょうか?

 

それはシュートが記憶情報として体に身についていないからです。

 

シュートを身につけるために、3つの感覚情報をどのように利用しているのでしょうか?

 

視覚で、ゴールの高さや距離、位置を確認します。

そして、シュートを打つ時の景色の移り変わりや、シュート後のボールの軌跡を確認します。

 

前庭系は、まっすぐな体の構え、タメを作る体の沈み込み、シュート時のジャンプなどの上下動を感知します。

 

体性感覚は、シュートの構えにおける手足の位置、ボールの材質や重さ、シュート前の沈み込む脚の踏ん張り、ジャンプの高さや強さ、腕の上げ方やスナップの利かせ方、着地の踏ん張る強さを感知し、力の調整に繋げます。

シュートをしたら、

こんな感じかな?」と感触をもとに、次回の成功に向けて感覚や力を修正し、

今度はこんな感じかな?」を繰り返し、

あっ、いい感じ。この感じ」を掴んでいくことで、

シュートが身についていくのです。

 

では、洗面所で顔を洗うときなど生活動作はいかがでしょうか?

 

視覚で洗面所と体の距離を確認します。

前かがみの角度を前庭系が感知します。

その時、背中や脚の筋肉で姿勢を保つ力加減を感知して調整します。

手で水の冷たさや流れる感触、手のひらに溜まっていく水の重さを感じ、

程よい角度とスピードで顔と手を近づけていきます。

水が顔に触れると顔を傷つけない力加減で、

手で顔をこすって洗います。

 

運動と感覚が密接に関係し、

相互に作用していることがわかりますね。

 

私たちは

ある環境において

目的の動作をするために、

外の情報を目で確認し、肌で感じ、

動いて体で感じ、感触をつかみ、

結果を修正し、正確な動作に繋げているのです。

 

脳卒中の方は

体の障害部位や健全な部位を利用して、

できるだけ正確な感覚情報を取り込み、認識して

運動を行うことが大切になります。

 

まとめ

・感覚には、特殊感覚、体性感覚、内臓感覚がある

・運動には、視覚、前庭、体性感覚の3つの感覚情報を利用している

・運動と感覚は密接に関係し、動きの感触をつかみ

目的動作を身につけている

 

動かすことや、動き方のみに着目しがちですが、

是非、感じ方にスポットを当ててみましょう。

 

次回は、感覚障害のリハビリをお伝えします。