麻痺の手を生活でしっかり活かすコツ!〜脳卒中つくばリハビリセンター〜

脳卒中後遺症として、

麻痺をした手をしっかり使っていないことが多いと思います。

前回、脳卒中による麻痺をした上肢の役割と

脳の可塑性(かそせい)を踏まえた上肢を使う大切さ

をお伝えしました。

上肢には沢山の役割があります。

手や指は細かな作業をこなすためには欠かせない機能です。

使うことで学習が進むこともわかりました。

しかし、実生活において、

麻痺の手を具体的にどのように活かしていけば良いのか、

なかなか分からないことが多いと思います。

今回は、

麻痺の手について、

大切な役割と生活でしっかり活かすコツをお伝えします。

手のひらを使って、認識を高めよう

まず、手を使うためには、

手を脳でしっかり認識しなければなりません。

脳卒中片麻痺の方を観察すると、

麻痺の手が丸く曲がったままお腹の真ん中に置いて、

座っている姿をよく見かけます。

この時、

麻痺の手はどんな役割を果たしているのか?

体の認識を高めるため?

バランスをとるため?

姿勢を保つための支持として?

・・・しっかり役割が果たせていない気がします。

私たちは、体を動かす(動く)ことで、感覚情報を取り込み、認識を高め、

より環境に適した正確な動きを実行します。

つまり、周囲の情報を取り込める体の状態にすることが大切なのです。

脳の分布をみてみると、

体の部位が区分けされていますが、

手の領域がすごく広いことがわかります。

それだけ、手の神経が発達し、手の果たす役割が大きいことがわかります。

手作業を観察してみると、

  • ペンを握る、
  • ペットボトルを持つ、
  • ボタンをかける

など、

ほとんどの作業で、

手のひら指腹を使っていることに気づきます。

手のひらの面は手の甲と比較して、

識別する受容器が非常に多いことがわかっています。

このセンサーがより繊細に高性能に働くため、

細やかな作業が可能となるのです。

(ちなみに、手の甲は温度の識別に有効です。)

普段から手のひらをしっかりと情報源として使用することが

大切になるわけです。

つまり、手を曲がったまま体の前におさめておくのではなく、

指をしっかり伸ばして、

手のひらで対象物に触れ、

対象物の形や素材、重さ、温度、大きさなど

情報を取り込むことが大切です。

そうすることで脳を刺激し、

可塑性を進めることに繋がるのです。

見えていることが大事

手作業をする時、

手の感覚を頼りにして見ないでこなせる作業もありますが、

大体のことは見ながら作業をこなします。

この時、作業の対象物を見ることはありますが、

手を見つめて作業することありません。

見つめることが大切なのではなく、

見えていることが大切なのです。

ここでは、物の見方について触れたいと思います。

物の見方には大きく分けて二つの見方があります。

一つは、中心視野です。

これは目標物を見つめる見方です。

手作業をする時は、

物品を操作する手ではなく、

扱う物品にフォーカスされます。

例えば、

手を伸ばしてコップを取るとき、

伸ばしていく手ではなく、

コップの位置や距離、形を探るためにコップを見つめます。

より正確な情報を得るために利用されます。

二つ目は、周辺視野です。

これは、先ほどの中心を見つめる見方ではなく、

周りの情報がなんとなくぼんやり見えている状態の見方です。

言い方を変えると、

無意識に周りの情報が取り込まれていることです。

例えば、

廊下を歩く時にまっすぐ歩けるのは、

まっすぐを意識して歩いているわけではありません。

左右の壁や天井の情報を周辺視野で取り込み、

距離感を自然と図っているため、まっすぐ歩けるのです。

空間の認識や、

姿勢を保つために利用されます。

手作業においては、

手がぼんやり見えていることで、

手が空間に適した位置や動きをしているかを認識し、

指先の感覚を頼りに手を使います。

目の情報と指の感覚をマッチングさせているわけです。

つまり、手作業時は、

手の感覚と視野の中に入ってくる手の情報を加えて、

対象物を見つめることで

より正確にこなすことが可能となるのです。

補助手だって立派な役割

麻痺が完全に回復し自分の意思で思うように手が使えることは、

誰もが願うことだと思います。

しかし、

回復が思うように進まないことも多く、

使いづらい手で苦戦しながら動作をこなすより、

使いやすい麻痺をしていない手で動作を行う方が実用的である。

確かに効率的だし楽である。

これが習慣になると、

ますます麻痺の手を使わなくなり、

不使用による学習を招いてしまうことになります。

もし、麻痺の手や肩に痛みや亜脱臼が無いのなら、

生活実用性を見極めながら、

補助手としての機能を最大限に活かすことが大切です。

では、具体的にどのように活かせるかみていきます。

姿勢を保つ

指は丸まっていますが、

麻痺の腕で体を支えます。

指を広げれば、より安定します。

麻痺をしていない手で作業するとき、

机に麻痺の手を置いて、姿勢を安定させます。

(視野内に手がある)

お皿を押さえる

腕の内側もしっかりテーブルに添えるとより効果的です。

ペットボトルを持って飲む

両手で行うことも学習が効果的に進みます

箸が難しい場合はスプーンもOK

指全体の力みに注意しながら使います。

立っている姿勢も麻痺の手で支える

手の認識、足の認識と共にバランス力が高まります。

工夫すると、生活場面での色々な活かし方がありますね。

まとめ

今回は、

麻痺の手について、

大切な役割と生活でしっかり活かすコツをお伝えしました。

  • 手のひらの感覚
  • 見えていることの大切さ
  • 具体的な生活での活かし方

これらを踏まえて、大切な麻痺の手をしっかり活かし、

回復の促進と生活の実用性を高めていきたいですね。