5「高次脳機能障害のリハビリテーションの進め方と生活での関わり方(後編)」

 

脳卒中の症状で高次脳機能障害に悩んだことはありませんか?

また、医療職や家族の方で関わり方に困ったことはありませんか?

 

リハビリや生活で悩む高次脳機能障害シリーズ

 

前回の第4回「高次脳機能障害のリハビリテーションの進め方と生活での関わり方(前編)」では

高次脳機能障害として最も重要な

“注意覚醒と意識障害”

“精神状態と脱抑制”

に対するリハビリテーションと関わり方をお伝えしました。

 

行動の源になるベースの要素が

整っていることが大切であるという話でしたね。

 

このベースが整ってきたときに

脳の働きが活発になるため、脳の損傷による働きの偏りも強まります。

つまり、様々な高次脳機能障害が現れてくるわけです。

その症状に対して、

どのようにリハビリテーションを進めていけばよいのか?

どのように対応していけばよいのか?

 

第5回

「高次脳機能障害のリハビリテーションの進め方と生活での関わり方(後編)」では、

各症状に合わせた高次脳機能障害の

リハビリテーションと対応の仕方をお伝えします。

 

 

 目的を持って自分の意思で行動する

 

覚醒状態や精神状態が整ってくると

いよいよ生活動作など課題に取り組む準備が進んできます。

しかし、覚醒が高まり精神状態が落ち着いていても

行動の目的が持てないことや

行動する意欲が出ないことがあります。

例えば、

食事の時間でお腹が空いているにも関わらずご飯を食べようとしない

長時間トイレに行かず、排泄を失敗してしまう

などがみられることがあります。

やる気がない”“怠けている”など誤解を招くことがありますが、

あくまで脳の損傷による影響であることを理解しましょう。

自らの意思で決定して、行動のきっかけを作ることが大切になります。

対応としては、

・課題に関して、いくつか選択肢を提示して、自分で選んでもらう

・時間や声かけなど行動の開始のきっかけを作る

など、自らの課題に参加する姿勢を作ることが大切です。

 

リハビリテーションは

・1日のスケジュールを立て、それを確認しながら行動に移す練習

・チェックリストを作り、必要な生活動作を実行したか確認していく

などの行動管理の練習をしていくことが有効です。

 

 

生活課題や状況の理解力を高める

 

行動するときに遂行機能障害があると、

課題や状況を考え理解し、計画し、達成に向け実行できないことがあります。

一つのことに固執し、物事が先に進まなかったり

動作が止まってしまったり、

状況が変化したことに対応できず混乱してしまいます。

 

周りの人は

”なんでこんなにこだわって繰り返すのかな?”

”あれ、急に動作が止まった”

”何か、戸惑って混乱しているかな”

”姿勢が崩れて倒れそうなのに、課題を続けて姿勢を直そうとしないなあ”

など観察できると思います。

状況を的確に捉え、理解することができていないためです。

今置かれている状況を見極め、理解できるようにサポートすることが大切です。

 

対応としては、

・あいまいな指示を避け、行動の具体的な指示をする

・5W1Hを明確にする

 ⇨いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように

・一つ一つ丁寧に確認して、実行に移る

などです。

 

リハビリテーションは

・スケジュールを立てる

・行動の手順を組み立てる練習

・行動の結果をフィードバックして、修正する練習

・一つの課題から確実にこなし、徐々に同時に課題を複数こなす

などです。

 

遂行機能障害など前頭葉が原因の場合は

根気と時間はかかりますが、

しっかり症状と向き合って取り組みことで、

改善していきます☆

周りの方もサポートし、皆で協力して取り組むことが大切です。

 

 

体の認識をしっかり高め、ズレを修正する

 

いくら意欲的に行動できたとしても、

体や空間の認識にズレがあると、

行動もズレてしまいます。

 

高次脳機能障害の失認

自分の手足を無視し気づかずに起き上がったり、

目の前の空間が歪んで見えたり欠如することで、曲がり角を通り過ぎたり

ドアに気づかないなどが起こります。

低下している認識を、いかに気づけるようになるかがポイントです。

 

リハビリテーションとして、

体の認識は、

見て確認し、触れて確認し、質問して確認を促す

⇨鏡で確認

⇨麻痺をしていない手足で麻痺側の手足を触る

⇨寝てる状態、座っている状態、立っている状態で

 体ごと右を向いたり左を向いたり繰り返す

 

空間の認識は、

・景色や物品を利用し、

 認識のある空間から認識の低い方向へ、徐々に認識を移して高めていく

・壁や台に向かって手を伸ばすことや、体を揺らして壁にもたれるなど

 壁や台を探り、距離感を感じる

などが有効です。

 

周りの対応は、

何とかしてあげたいと思い

認識を高めようと認識の低い方から無理に声をかけたり触れたりしがちですが、

脳卒中の方の体験談では、すごく違和感に感じるようです。

本人が認識していない方向から刺激が入ってくるため

ストレスに感じるそうです。

 

例えば、

1対1の状況で顔を合わせず、後ろからずっと話かけられたら違和感がありますよね。

似たような感覚かもしれません。

 

ではどうしたらよいのか?

 

認識のある方向から声をかけたり手をとったりして、

まず相手を安心させてから

徐々に認識の低い方向へ移動していくといいですね。

声かけの位置や立ち位置も工夫してみましょう。

 

 

課題に取り組む集中力と持続力を養う

 

しっかり体が使える準備が整ったら、

課題に集中して取り組むことができるか、

疲れずに課題を持続できるかによって

生活が成り立ちます。

 

注意障害があると課題に集中できず、

周囲の人や物音に気が散ってしまいます。

そのため、ミスが増え、正確に課題がこなせないことがあります。

 

また、持続する力が低下していると課題が途中で終わってしまい

達成しないことがあります。

特に、同時に何種類もこなすような課題では、正確性や持続性がより低下します。

例えば、

”水をこぼさないように、狭い家の中を、杖を使って、歩いて運ぶ”

などはたくさん気を使いますよね。

このような時に、失敗が起きやすいわけです。

 

さて、どのように対応したら良いのでしょうか?

・余計な刺激をなくし、環境を整備する

 ⇨人が多い環境を避ける。

・刺激に反応しやすい方向からの視覚や聴覚の刺激を減らす。

・簡単な課題から始め、できない部分は手伝う。

 徐々に課題を難しくして、達成力を身につける

 ⇨シンプルな課題から、より複雑な課題へ設定を調整する。

などです。

要するに、気が散らない状況を作ることですね。

 

その他、専用のリハビリテーションソフトやテストバッテリーもありますが、

ここでは紹介を割愛させていただきます。

 

コミュニケーションの工夫

 

最後は、失語のリハビリテーションと対応をご紹介いたします。

 

言語機能は言葉を理解する、話すといった機能だけでは無く、

覚醒状態、意欲、注意、心理状態などと関わり合っています。

そのため、失語症になったことで

人としての尊厳を失ってしまったかのように捉え、

社会参加を避けてしまう方もいます。

 

本当に辛いことです。

 

では、どのようなリハビリや対応が有効でしょうか!?

 

リハビリテーションは

・生活動作の絵カードを使いコミュニケーションを図る練習

・言葉を使わず、ジェスチャーで伝え合う練習

・単語⇨二語文⇨三語文⇨文章など徐々に難易度をあげて話す練習

・文章のQ &Aで、理解力を高める練習など

などを行います。

 

対応の工夫として、

・はい、いいえで答えられる質問をする

・ゆっくりシンプルに話す

・言葉と合わせてジェスチャーを使う

・出てこない言葉がある場合は、先読みして手助けをする

などの配慮を取ると良いでしょう。

 

失語症の方はコミュニケーションに対して

同じような悩みを抱えている方が多いため、

集団教室や集いの会などに参加してみると

相互理解と社会参加のきっかけになるかもしれません。

本人の努力だけでは無く、家族や周囲の方の協力が不可欠です。

 

まとめ

今回は、リハビリと対応の後編として、

・目的を持って自分の意思で行動する

・生活課題や状況の理解力を高める

・体の認識をしっかり高め、ズレを修正する

・課題に取り組む集中力と持続力を養う

・コミュニケーションの工夫

についてお伝えしました。

 

最後に、

全5回に渡ってシリーズで

リハビリや生活で悩む高次脳機能障害を

お伝えしてきました。

 

高次脳機能障害はまだまだ理解や対応に悩む難しい症状です。

高次脳機能障害をお持ちの方もその周囲の方も

一人で抱えて悩まず、 リハビリの専門家に相談することも解決の糸口になります。

相互の理解と協力が不可欠であり、

良き関係性を築き、

積極的に社会復帰していきましょう。