第4回目

「高次脳機能障害のリハビリテーションの進め方と生活での関わり方(前編)」

 

脳卒中の症状で高次脳機能障害に悩んだことはありませんか?

また、医療職や家族の方で関わり方に困ったことはありませんか?

 

リハビリや生活で悩む高次脳機能障害シリーズ

 

前回の第3回目「高次脳機能障害の種類と症状」では

代表的な高次脳機能障害として、

“注意障害”

“失認”

“失行”

“失語”

“遂行機能障害”

の紹介と、それぞれによくみられる生活場面の様子をお伝えしました。

 

高次脳機能障害は、

脳の同じ病巣であっても現れる症状は個人差があり、

リハビリテーションの進め方も一様に進まないのが現状です。

 

HOW TOだけを教科書的に覚えていても

多彩な高次脳機能障害がいくつも重なっていると、

思い通りにリハビリを進まず、壁に当たってしまいます。

 

実際、高次脳機能障害に対するリハビリテーションは、

まず何から手をつければよいのか

悩むことが多いと思います。

 

また、周囲の方も慣れない症状に混乱し、

関わり方に悩むことも多いと思います。

 

第4回目は、

「高次脳機能障害のリハビリテーションの進め方と生活での関わり方(前編)」では、

実際の臨床や生活場面を元に、

活動に必要な高次脳機能

リハビリテーションの実際の進め方で最も重要な機能として

注意覚醒および意識障害

精神状態と脱抑制

についてお伝えします。

また、周囲の方が良好な関係性を築くためにはどのように関わればよいのか

その一助をお伝えします。

 

 

活動に必要な高次脳機能

高次脳機能障害のクライアントをリハビリで担当するとき

セラピストは何を考え、どのように捉える必要があるのか?

 

その考え方のきっかけとして、

まず、症状を持っていない健常人の行動を考えてみましょう。

 

良好に行動するためには、

高次脳機能としてどんな要素が必要か?

 

・良好な意識、覚醒水準

・良好な精神状態

・危険な行動にならないようにコントロールできている(抑制)

・生活課題や状況の理解力

・課題に取り組める集中力と持続力

・体の認識がしっかりある

・体の認識のズレが無い

・行動に目的を持って自分の意思で行動している

などの要素が必要です。

 

これらの要素がしっかり備わっているからこそ

普段、私たちが当たり前のように行動していることが出来るのです。

 

つまり、高次脳機能障害のクライアントも

これらの要素をいかにして整えられるかが

重要なポイントです。

 

活動に特に重要な二つの機能

 

では、活動するためには何が最も重要なのか?

 

一つ目は、

あらゆる運動機能、感覚機能、高次脳機能に影響するものが

意識注意覚醒です。

意識障害を伴っていたり覚醒が低下していると常にぼんやりしているため、

活動自体が起こりません。

活動するためには注意覚醒と意識が高まっていることが何よりも重要です。

 

二つ目は

良好な精神状態です。

気持ちが乱れていてはしっかりとした運動に繋がりません。

ときに危険が伴います。

良好な運動が安全に行えるためには、精神状態が安定していることが重要です。

また、サポートする方との良好な関係性を築くためにも重要ですね。

 

では、重要な二つの機能について

もう少し詳しくみてみましょう。

 

注意覚醒および意識障害

 

 

注意覚醒と意識を高めるためには何が必要なのか?

 

まず、脳や全身に酸素栄養がしっかり回る状態であるか、

呼吸や心臓の働きをチェックしましょう。

つまり、

息をしっかり吸って吐いて、

心臓がドクドク働き、

脈拍がしっかり観察できるか

が大切です。

 

次にあらゆる部位の運動や感覚を駆使して刺激を加え

体に取り込んでいくことが覚醒を高めます。

 

対応の実際としては、

・カーテンを開けて外の光を取り込み、視野を広くする

・姿勢を起こして体を使うことで、体の緊張をあげる

・手足をさすって、皮膚や圧刺激を入れる

・体を動かして、圧や揺れを感じる

などが効果的です。

全身を使って運動することですね。

また、

名前を呼ぶなど馴染みのある声かけをすることも

単に聴覚を刺激するだけではなく

親近感が湧き意識を向けやすくなるため効果的です。

 

意識や覚醒が高まってきたら、生活動作へと繋げていきます。

 

 

精神状態と脱抑制

 

では、二つ目の精神状態はどのように重要なのでしょうか?

 

私たちも普段物事に対して何かしら指摘をされると

イラッとしてしまうことがありますよね。

でも、私たちが簡単にキレて怒らないのは

気持ちを抑制する働きがあるからです。

 

よく見かけますが、

クライアントがイライラしたり、興奮しているときに

無理に抑えようと説得すると

返って気持ちを逆なでしてしまうことがあります。

これは、

気持ちを落ち着かせて抑制する働きが低下しているからです。

この状態を「脱抑制」といいます。

 

では、どのように対応していけば良いのでしょうか?

 

大切なことは接し方です。

相手の発した言葉をしっかり受け止めて傾聴し、

親身に対応することです。

 

誠意が相手に届きますからね。

 

そして、叱るのではなく、できることを褒めて伸ばす

ポジティブな支援が必要です。

人は褒められると気持ちがいいもの。

”あなたを支援していますよ”といった姿勢が大切です。

 

脱抑制に対して「待つ」練習

 

では、リハビリテーションはどのように進めるのか?

 

基本的には前述の姿勢で取り組みます。

そして、

行動の前に一呼吸入れる、一定時間「待つ」練習をします。

 

根本に「待てない」症状があるため、

自分の思っているタイミングと実際のタイミングにギャップがあるわけです。

 

早まらず、適切なタイミングで行動できるようにタイミングを誘導していきます。

また、次の行動を待つ約束事を決め、一定時間抑制が保てるように進めていきます。

最初は短い時間から、徐々に待つ時間を長くしていくと有効でしょう。

 

ポジティブなコミュニケーションのトレーニング

 

コミュニケーションと聞くと言語聴覚士専門の仕事と思うでしょうが、

人との関わりはどんな職種も関わります。

日頃の会話を通じて、

・相手の気持ちを確認するトレーニング

・ポジティブフィードバックをする

などのトレーニングが大切です。

 

徐々に抑制する力が身につくだけではなく、社会性が備わってきますから

社会復帰に向けて大切な準備となります。

 

まとめ

今回は

・活動に必要な高次脳機能

・活動に特に重要な二つの機能

・注意覚醒および意識障害

・精神状態と脱抑制

についてお伝えしました。

 

高次脳機能障害の症状は多彩であり、

人によっても症状は様々です。

 

人が良好に活動するために、

必要な要素がいかにベースとして整っているかが大切であり、

その後の発展したリハビリテーションに繋がるのです。

また、接し方が工夫できるとお互いに良い関係性が築けてくると思います。

 

第5回目は、

高次脳機能障害のリハビリテーションの進め方と生活での関わり方(後編)

をお伝えいたします。