脳卒中による麻痺をした上肢の大切な役割!〜脳卒中つくばリハビリセンター〜

脳卒中片麻痺を患った方からよくこんな声を聞くことはありませんか?

「麻痺の足は動くけど、手が動かなくてね」

「歩くことはできるけど、生活で手はほとんど使えないなあ」

麻痺の上肢の回復に悩む意見が非常に多いのが実情です。

また、

「動く方の手で生活動作は行っています」

「麻痺の手はほとんど使ってないです」

など、麻痺をしていない上肢で日常生活をこなし、

思うように動かない麻痺の上肢を

積極的に使う機会が少なくなっています。

麻痺の状態にもよりますが、

たとえ動かしづらいとしても、

意識して積極的に麻痺の上肢を使うことをオススメします。

そんなこと言われたって、

「思うように動かないんだからしょうがない」

「動かせるなら動かしたい。無責任なことを言うな」

と思いますが、

なぜ、意識して積極的に使うことが大切なのか、

そこには重要な意味があります。

今回は、脳卒中による麻痺をした上肢の大切な役割と、

使うことの大切さをお伝えします。

上肢の役割とは?

私達が五体満足だと、

日頃、手を当たり前に使っているため、

特別に何も感じないことが多いかもしれません。

ところが、ケガや麻痺になると、思うように使えなくなるため、

手のありがたみを感じると思います。

手の機能がいかに精密で、

細やかな動きをこなし、

正確に作業することが出来るのか、

手の重要性に

気づかされるからです。

では、上肢にはどんな役割があるでしょうか?

  • 細やかな作業をこなす
  • 道具を扱う
  • 物を押さえる、安定させる
  • 体のバランスをとる
  • 体を支える
  • コミュニケーション手段
  • 温もりを伝える
  • 心をつなぐEtc.・・・

挙げたらキリがないくらい

沢山の役割があります。

単に作業や道具を扱う機能だけでなく、

コミュニケーションの手段や

温もりを伝える役割があることは、

手の温かみを感じますね。

よく手を施すことを手当てといいますが、

患部に手を当てるだけでも

癒しの効果があることを感じると思います。

進化の過程で発達した上肢機能は、

私達の日常生活に欠かせない機能があり、

本当に素晴らしい役割ですね。

麻痺の手は使わないと使えなくなる

では、麻痺の手は使えなくなるのか?

厳しい見解ですが、

結論から言いますと、

麻痺の手は使わないと使えなくなります。

えっ、

“使えないから使わない“ではないの?

確かに脳卒中発症直後、

上肢を支配している脳に損傷があると重度の麻痺になるため、

思うように使えず、

生活上、麻痺の手を使わない状態になりやすいと思います。

そうすると、麻痺をしていない手で代用します。

月日が経っても同じように麻痺をしていない手を多用し、

麻痺の手を使わないでいると、

いざ麻痺の回復が進んできても使わない習慣が身についてしまいます。

“回復が進んできてから少しずつ使い始めたらいいのではないか!?”

と思い方もいると思いますが、

ここに落とし穴があります!!

実は脳には可塑性(かそせい)といって、

絶えず変化する性質があります。

沢山感覚を感じていると感覚が研ぎ澄まされたり、

細やかな運動をしていると脳の神経が発達して、

手を動かす脳の支配領域が細分化されます。

ところが、脳が支配している手の領域を使わないと

脳の支配領域が狭くなったり、

時には無くなって、

他の体の部位の支配領域に置き換わってしまうことがあるのです。

脳がこの状態になると、

いざ自分の思い描いているように手を使おうと思っていても、

命令が手に届かないため、手が動かないのです。

このことを、不使用による学習(学習性不使用)といいます。

この脳内の可塑性は動物の研究において、

神経切断後、数分〜数時間後には始まっていると報告されています。

これが数ヶ月単位の時間経過となると、脳が大きく変化してしまうことが、

容易に想像できると思います。

脳卒中によって脳に損傷を受けると、

脳の可塑性は当然起こります。

麻痺によって利きづらい上肢であっても、

しっかりと感覚情報を入力し、

痛みや亜脱臼に注意しながら

沢山麻痺の手を使っていくことが大切ですね。

まとめ

今回は、

脳卒中による麻痺をした上肢の大切な役割と

使うことの大切さ

をお伝えしました。

上肢には沢山の役割があります。

脳の可塑性を踏まえると、

麻痺をした手だからこそ、

認識や感覚を高めて、

しっかりと活かせるようにしたいですね。

次回は、麻痺の上肢の効果的な使い方についてお伝えします。