脳卒中になると話が出来なくなるの?〜脳卒中つくばリハビリセンター〜

もし、突然あなたが話すことが出来なくなってしまったらどう思いますか?

当然、生活や対人関係など様々な場面で困ってしまうと思います。

話が出来ないことで

外出や人と会うことを意図的に避けるかもしれません。

脳卒中を患うと

手足が麻痺したり、

手足の感覚が鈍くなることがよくありますが、

時に、ろれつが回らない、話すことが出来ないなどの

コミュニケーションに障害を追ってしまうことがあります。

コミュニケーションは単に発話するだけでなく、

相手の話を理解することも必要です。

脳卒中にかかると必ず話が出来なくなってしまうのでしょうか?

そんなことはありません。

脳卒中の後遺症は人により様々であり、

コミュニケーションに障害を負う方もいれば負わない方もいます。

では、なぜコミュニケーションに障害を負う方と負わない方が

いるのでしょうか?

また、話はできるのに理解できない場合や、

話せないのに理解はできる

といったことが起こるのでしょうか?

今回は、

脳卒中の後遺症である失語症についてお伝えします。

失語症とは?

脳卒中の後遺症に失語症がありますが、

単に話せなくなることではありません。

では、失語症とはどのようなものでしょうか?

失語症は、

脳卒中の後遺症である高次脳機能障害の一つです。

言語機能として、「聞く」「話す」といった音声に関わる機能や

「読む」「書く」といった文字に関わる機能が障害された状態です。

失語症の原因

では、失語症はなぜ起こるのでしょうか?

それは、

脳には言語機能の中枢である言語野があり、

ここが脳卒中などで損傷されるとことによって失語症になります。

言語野は大脳半球の左右どちらかに偏在すること、

統計的に利き手と相関性があることが知られており、

90%以上の人は左大脳半球にあるとされています。

つまり、大部分の方が

右利きの人は左脳に

左利きの人は右脳に

言語野があるとされています。

失語症の種類

失語症が言語野の障害で起こることはわかりましたが、

話が出来ない方もいれば、理解が出来ない方もいます。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

ここでは、代表的な失語症について紹介します。

脳には

発話などを司る

運動性言語野(ブローカー野)

話の理解を司る

感覚性言語野(ウェルニッケ野)があるからです。

運動性言語野は左前頭葉に存在し、

言語の表出、発語、喚語などの機能があります。

ここが障害を受けると運動性失語(ブローカー失語)が起こります。

しかし、理解力は比較的保たれます。

一方で、

感覚性言語野は左側頭葉から頭頂葉下部に存在し、

聴覚的理解や滑らかさなどの機能があります。

ここが障害を受けると、言い間違えや聴覚的理解の障害、

意味不明な発話をするジャーゴンなど、

感覚性失語(ウェルニッケ失語)が起こります。

つまり、発話機能自体は障害されずに残っているわけです。

また、前頭葉、側頭葉、頭頂葉の境目であるシルビウス裂周囲の広範囲の損傷では、全ての言語機能が障害を受ける重篤な全失語になります。

症状の種類

ここでは、失語症に伴う症状をいくつかご紹介いたします。

喚語困難(かんごこんなん)

何か言おうとした時に、言うべき言葉が出てこない状態です。

これは、どのタイプの失語症にもみられます。

えーと、あの、それは・・・など

話すことを考えているのだが、目的の言葉が出てこない状態です。

錯語(さくご)

錯誤とは、

言葉を言い間違えることです。

例えば「とけい」を「めがね」と言うように、

他の単語に言い間違えてしまう「語性錯語」と、

「とけい」を「とてん」「とけん」などと発音を間違える

「字性錯語」があります。

言葉の言い間違いがひどい場合は、

意味不明の言葉(ジャルゴン)が続くようになり、

「ウェルニッケ失語」によくみられます。

保続(ほぞく)

保続とは、

同じ言葉が何度も繰り返されることをいいます。

例えば、

名前を聞かれ、名前が言えたあと、

続いて年齢を聞かれても名前を言い、

次に住所を聞かれても名前を繰り返すような状態です。

生活にどのような影響が出るの?

失語症には偏見と誤解が多く、

認知症になってしまった、

幼児返りをしたなどと思われることが少なくありません。

失語症は、コミュニケーションの障害ゆえに

対人関係に支障をきたしやすく、

本人のQOL(生活の質)を大きく下げてしまいます。

生活場面の具体例として、

  • 家族との挨拶が交わせない
  • 電話の応対が出来ない
  • 来客の応対が出来ない
  • テレビの音声が理解出来ない

など、家の中の生活においても影響を受けてしまいます。

また、人との関わりに引け目を感じ、

  • 趣味の集まりに参加しなくなる
  • 買い物での金銭のやり取りがしにくい

など、徐々に外出を避けやすくなってしまいます。

このように生活や社会参加に大きく影響します。

失語症で悩んでいる方が気兼ねない生活を送るためにも、

周囲の方の気配りが必要不可欠であり、

協力と配慮が大切です。

心温かい応対がどれだけ失語症の方の心を救うか、

相手の立場に立って関わっていきたいものです。

まとめ

今回は、

  • 失語症とは?
  • 失語症の原因と種類
  • 症状の種類
  • 生活への影響

についてお伝えしました。

コミュニケーションは自己の意思を相手に伝える大切な手段です。

コミュニケーションが取れないことは非常に不安であり、

生活や対人関係に困ってしまいます。

もし失語症の方が身近にいたら、

積極的に寄り添ってサポートしたいですね。

次回は、

失語症に対する関わり方や

リハビリテーションについてお伝えします。